私の入口 「輝く日の宮」丸谷才一著



『たった一人の反乱』
著者・丸谷才一
感想:
この著者、丸谷才一氏の作品を読むのは2作目。

前作
「輝く日の宮」はケッコーくせがあったので、どうかなあ、と思ったけれど、今回の方がだんぜん読み易かったです。

この作品は、72年(私の産まれた年)に谷崎潤一郎賞をとっていて、当時話題になったようです。

こういう、いわゆる最近の作品でないものは、とにかく知る機会が少ない。
それが、このサイトをはじめて世代間の行き来ができると、この様な作品にもめぐり逢うことができる様になって本当に嬉しい。

以前、雑誌ダヴィンチで、○年前の話題作という企画があり、その時も72年の話題作を(やはり産まれた年だから気になって)数冊読んでみました。
その中の私のベストヒットは「日本人とユダヤ人」(イザヤベンダサン著)

イザヤベンダサン、と、さもユダヤ人からみた2民族を書いている様ですが、このイザヤベンダサン、じつは山本七平という日本人。

なかなか、いや、かなり面白い作品でした。

72年は、こんなに面白い作品達が登場した年だったんだなあ、などと、他の年はまったく(読みもしないで)さておいて誇らしく思っちゃいました。

で、この年の時代背景がイマイチ解っていないのが、ちょっともったいないのですが、今回のこの「たった一人の反乱」も、今現在読んでもとても面白いし、新鮮。

主人公が戦前産まれで時代の大きな流れの中にいるから、余計この「反乱」という概念があたはまるのかもしれないけど、やっぱり現代人もフツーの市民社会にたった一人反乱を起こしたい、というか、フツーの市民社会から逃れたい気持ちはおおいにあるはず。

その、「現実生きなければならない社会と、自分の中の自由奔放に生きたい気持ちとのせめぎ合い」を、はじめはやんわり実生活の中に、後半は講演の中に、様々な角度からとらえて表現しているのが、この作品のとっても面白いところ。

この著者の、私の読んだ前作でもそうだったが、登場人物の講演が、とっても大きな意味をもっていて、その辺り読みごたえがある。

余談になりますが、この作品の主人公は、ケッコーなぼんぼん。
で、いままでなんとなく感じていた、「書物とカースト」について、とっても気になりはじめました。

明治以前は、やっぱり書物は高価なものだったでしょうし。でも、江戸時代に大衆文学は確立してたし。でも、やっぱり戦前の作家は、当然カースト制度を意識してるし。(今でも、あるか)

現代は、「身分の違い」的な感覚が薄らいでいるけど、決してなくなってはいない。から、ドラマがうまれたりしてる。(のでしょ?)

「カースト制度が文学にあたえてる影響」なんていう研究している人、いないのかしら?それとも、そもそもカースト制度がなければ、文学なんて登場しなかったのかしら???

気になる。。。。

出口

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