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『最後の将軍』
著者・司馬遼太郎
感想:
歴史小説を読む時、必ず感じることがあります。
人は、何故に私欲から脱せられないのか。

歴史は、間違い無く繰り返される。
それは結局、人の欲がいつの時代も変わることがないからなのでしょうか。

時代の変わり目には、往々にして偉才を放つ人物が登場します。この、最後の将軍、徳川慶喜もそのひとりでしょう。また、この時代には、あまりに多くの優秀な人材が現れました。何故、そんなにも俊才な人達がいるにもかかわらず、血が流れるのでしょうか。

作中引用
豊臣秀吉も徳川家康も、その直属の家来をのぞいては、外様大名の
君主ではなく盟主であった。(中略)盟主は、武力さかんでなければならない。
旗本などは(中略)幕府をまもるための軍人であるべきなのに、こんにち何の役にも立たない。(中略)つまりいま幕府は旗本に食いつぶされようとしている。

政治学を、歴史から深くキチンと学んだことは無いけれど、素人の私にも、
それぞれの役目を怠り、立場だけを守ろうとした人達に、その役目を含む
組織は崩されていく。という原理は解る気がします。

その組織が、幕府であったり朝廷であったり、現代でいえば、現在の日本政府であったり自治体であったり。(そして自分達が属す会社であったり、家族であったり?!(^_^;))

その中にいて、慶喜は自身の立場に執着していなかった。(反面、詰まるところ、根っからのお気楽貴族だったんだろうし、そこが、人々の反感を買ったのだろうけど)

そして、恐ろしいのは、
時代の流れ、でしょう。
慶喜が、どんなに戦を避けたくても、群集(徳川軍は、もはや群集と化していた)の感情は押さえられなかった。慶喜個人が賊軍の誹りを受けるだけでなく、結果、時代を顧みた時、賊軍になるのは、結局感情で動いてしまった側、なのでは。。。。(相手側、薩は、その感情を煽って戦にするのだけれど、、、。)

慶喜は生き残ったけれど、この戦いで失った命もいっぱいあるのに。
革命は、血を流さずにはすまされないのかしらん。(*-*)

ま、堅苦しいことは、さて置いても、この作品は、やっぱりかなり面白かったですね。
この幕末期を舞台にした作品は、どれをとっても面白い。

時代を、今になって見れば「そりゃそうなるよね」って感じるど、この時代に生きてたら、何がなんだかさっぱりワカラン???って具合だと思うな。

諸外国と直接接点のあった薩摩長州にしてみれば、当然自国の矛盾に気が付いちゃうし、平和な時代が300年も続いていたら、ふつうはみんな平和ボケしちゃうし。こんな狭間に、いきなりペリーがやってきて無知な政府に世界の例を解いても、訳がワカラン???になっちゃうだろうし。でも、立場があるから、「よく解らないから、ちゃんと教えて下さい」って聞けないし。

当然といえば当然のなりゆき、だろうけど、ポイントポイントで、困ったさんが登場しちゃうんですよね。(ま、それはいつの時代も)

間違い無く、現代日本は、明治維新から100年、戦後60年しかたってなくとも、平和ボケしちゃってるから、気をつけないと、ですよね〜〜!!!

最後に、出口の紹介です。
この時代ものは沢山有り過ぎて、困っちゃうのですが、最近、私のお気に入りは、
佐藤雅美です。
中でも、
「大君の通貨」は、この歴史背景にあって、無理矢理外貨導入(小判流出)の道をこじあけられている様子が解って面白いです。
あと、この作品(最後の将軍)の中でも、最後の最後に慶喜に裏切られる会津藩主松平容保が登場しますが、この人は新撰組ときっても切れない人、ですよね。
で、その新撰組を独自の角度から小説化した
「壬生義士伝」(浅田次郎著)が、非常に味があってよかったです。

是非、参考に、お読みください。


出口 壬生義士伝」(浅田次郎著)
「大君の通貨」(佐藤雅美著)


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